CM制作を料理になぞらえると、昨年冬シーズンで人気だった＜グランメゾン東京＞という料理ドラマに似ていた。GAKUの料理人の丹後学（尾上菊之助）は、資金力豊富なオーナーをバックに高級食材をあらゆる手法を駆使して創る創作フレンチ。かたや、現地素材（東京近郊）だけを使い、自分の腕一本で勝負するグランメゾン東京のスーシェフ尾花夏樹（木村拓哉）。

 

 

どちらも見た目も中身も相当うまそうだし、手間暇やアイディアは半端ない。

それを味わうために旅行する価値がある卓越した料理というミシュラン三ツ星条件。

 

TVCMは分業制で企画設計は広告会社・制作は制作プロダクションとなり、CM演出が最終的にCMディレクターとして表立っているが、企画担当責任者のCD（クリエイティブディレクター）がその仕掛け人である。CDは普通卒業し、次長局長と管理職、そして執行役員へと目指す椅子は変わっていくが、この二人は違った。

 

2018年から始まったエグゼクティブ・プロフェッショナル（EP）制度。高い専門性で会社に大きな貢献をし、執行役員かそれ以上のレベルの特定した人。

 

一人目はプライム・エグゼクティブ・プロフェッショナルの古川裕也氏。上智大仏文科の奇才。

GAKUの丹後学である。味の素スタジアムで奇妙な設定のCMをつくり、

JR九州新幹線では九州一周ロケ（一般人巻き込み）を敢行。

ポカリスエットでは踊る修学旅行というまか不思議な世界をつくった。

強烈なのは亡くなった樹木希林の広告。宝島社＜死ぬときくらいすきにさせてよ＞の広告。

 

かたや日本の食材を十分に吟味し、フレンチでありながら空気感を閉じ込めた傑作を生みだす、東大出身のシニア・エグゼクティブ・プロフェッショナル澤本 嘉光氏。

ソフトバンクの白戸家シリーズの継続して担当し、

東京ガス＜ガス・パッ・チョ＞シリーズで和テイストを追求、

資生堂UNOでは若い超人気俳優たちを完全にキャラクター化して、

中央酪農会議＜牛乳に相談だ＞ではコミカルな画づくりで話題をさらった。

 

映画＜犬と私の10の約束＞＜ジャッジ＞＜一度死んでみた＞の脚本を書くほどの文才でもある。

 

この天才CM料理人と組んだことがある。私はGAKUの丹後学、後輩プロデューサーはグランメゾン東京の尾花夏樹。制作プロダクションのプロデューサーだから。どの作品とは言わないが、映像評価とは別に制作予算という拘束は料理人の範疇ではない。天才CM料理人は原価に関係ない。

 

 

プロダクションキラーと呼ばれ、胃に穴が開く思いを継続するのは健康に非常に悪い。フレンチは高い。ものすごく。世界のベストレストラン50に確実に選ばれる二人だけど、ここについていけるプロデューサーは少ない。何故なら、仕事は受けたら引けない。赤字レベルではなく、倒産覚悟で望める役員プロデューサーでなければそれはできない。日本に10人といないだろう。天才料理人と組めるプロデューサーは。