Dobbs Fifth Avenue
ドブズ(Dobbs&Co)の創業は1908年。コネチカット州ノーフォーク市長ジョン・カバナーはCroft&Knapp社の副社長で、ハイエンド・シルクハットメーカーであるDunlap&Co社のH.Dewitt.Dobbs(デウィット・ドブズ)をC&K社の販売店店主として据えたところから始まります。
東海岸のビジネスマン向けハットブランドのKNOX社と西海岸の大手STETSON社に挟まれ、なおかつ当時関税の安い東欧産のハットが流入しC&K社は苦悩していた。
ノーフォーク市長でもありハットデザイナーでもあるジョンは、宣伝担当Robert.A.Holmesと新しいブランドを考えていた。それが若者向けブランドDOBBS。半分はK&Cのアウトレット店みたいなスタイルでのスタートが、この先見性でやがて親会社であるK&Cを大きなHat.Co社に成長させることになる。
20世紀初頭、アメリカ帽子製造は2つの大きな問題に直面。1つは高くなりすぎた労働賃金と販売の主であるデパートでの小売りによる価格の高騰化。もうひとつは労働賃金の安い東欧からのハットの流入。ストライキを繰り返す組合は製造ラインを止め生産性を下げ、高騰する販売価格は商品を売れなくした。
高品質なハットであってもひとつあれば十分。いくつも買うことができない消費者は、安くてかっこいい帽子に必然的に流れていく。ジョンはこれを先読みし、ピンポイントに若者向けファッション、ニューヨークの中心である五番街進出<Dobbs Fifth Avenue>にこだわった。
Dobbs&Coはすべてがファッショナブル。ディーラー向けのカタログはイタリアの手製の厚紙を使用、すべてのカタログにDobbsの署名入り。王冠のロゴデザインも含めて店内もおしゃれに。オリジナルハットボックスはストアデザインが側面全面にプリントされ、ドブズを扱うことがニューヨーカーのハートを掴んでいるかのように広告戦略しました。
ほかのブランドが新しいシリーズを次々投下できない中、ドブズは常にニューモデルを発売、ファーハットのみならずストローハットも毎年変わっていく。全米1000都市攻略のためのHolmesとDobbsの戦略は革新的でした。
数々の写真が残されている中でDobbs&Coはその住所244 Fifth Avenueと620番地のセールスオフィス。五番街であることがDobbs&Coのステイタスでした。ロックフェラーセンター建築に乗じて1927年244店が324店に移転。火事の被害から620オフィスも移転しましたが五番街であることは捨てられない。
1931年世界恐慌の煽りを受けDobbs&Coも破産申請します。でもたった1年でジョン・カバナーは711 Fifth AvenueにDobbs&Coをオープン。そのお祝いイベントに黒い馬が引くハット運搬車(コーチ)が登場、以降このアイコンがハットインナーとして使われています。
創業者John.Cavanagh・広告戦略Robert.A.Holmes・販売担当H.Dewitt.Dobbsこの3人のDNAが、21世紀のいまでもニューヨーカーのハートを捉えて離しません。
ちなみにいまのDOBBSのファッションリーダーはこの人、10個のグラミー賞を持つアメリカのアイコン、ジャスティン・ティンバーレイク。
引用および参照
Hatted Professer:Dating Dobbs