TVCMは基本ワンクール（3か月）の賞味期限でリニューアルされる。

CMに出ることが芸能人の人気バロメーターのように扱われ30年。副業だとか本業以外に稼ぐタレント事務所の収入源にように言われているが、CM関係者にとっては冗談じゃない（完全に上から目線のとらえ方）。

 

 

CMクィーンとか呼ばれる女優が10社以上の契約を抱え、去年との契約数ランキング比較で、落ち目だとか上がり目だとか週刊誌は書きたててそれをTV局バラエティが追いかける。本業の実力とは関係なしに、CM出演はその瞬間の人気を測る基準値のように扱われる。いったい幾らもらっているのか？　そのギャラ相場まで表に出てしまう始末。もちろん予想であっても正解ではないし、笑っちゃうほどその数値（推定3,000万とか）は正しくない。→　契約金を公開する意味はなく、ただの想定金額はゴシップ記事（週刊誌が買うネタ）にしかならない。

 

 

TV番組の制作費が報道やドラマやバラエティで全く違うように、CM出演ギャラは広告塔として一律ではなく、所属事務所の形態でも本人が手にする報酬は違う。特に外国の俳優やアーティストの起用は桁違い。日本国内（極東限定）かワールドワイドか、TV限定かウェブを含むかでも交渉金額は数倍になることもある。

 

日本では広告主が上位にあり、契約する俳優や歌手の肖像を買う（著作権として）ように思われているが、映画が映像の最高の品格を持つハリウッドでは、俳優たちが上位にあり、自分（俳優のカラー）を他社のCMで色付けされることを嫌う。資産はあるから別にCMオファーを断ることなんてなんでもない。元カリフォルニア州知事のシュワルツェネッガーだけが特別で、極東限定だからハリウッドではオンエアされないと日本のCMに出ていた。

 

さて、問題を起こしたら契約解除しますよ。

という契約書の条項に基づき最近解除され、賠償金を払う話を聞くようになったが、出演俳優を決めたのはキャスティングディレクターであり、本来契約仲介者としては弁護士と同じく法的に文書作成が可能な人扱い。互いの不利益になることを明確にし、それに違反したら取り消しまたは賠償金支払いという書面だ。甲が乙に支払うというものではなく、AさんとB社はこういう内容（双方の得る利益）で合意し、B社がAさんに契約金（対価）を支払うというもの。

 

確かにAさんは契約期間中にB社に不利益な行動をしてしまった。…としたら、キャスティングディレクターがそれを見越した調査が足らなかったということでもある。→　連れてきたのはあなただろう、だったらその責任を取らなくてはならない。

 

CM出演が本業（俳優や歌手）の合間に行われる副業のように扱われていることがこの欠点であり、安易に人気者を起用しようすることが間違いのもと。特徴のあるCM1社に出ていればそのイメージが強く残る。5社6社まして10社となると、果たしてその俳優の色は出るだろうか？1/10しか出ていないことになる。それがいいキャスティングなのか？　

→　日本を代表する大女優・吉永小百合さんも限定3社と決めている。自分のカラーと広告主のカラーを印象付けるには3社でいっぱいということだ。

 

まるで不動産業のように契約書を仕事とするのであれば本来弁護士（エンターテインメントロイヤー）であるべきもの。どうしてこんな大事なことを責任を取れない人を介して行われているのか？　監督官庁の総務省はそのことを把握しているのか少々疑問である。

 

 

事件は毎年起こる。さあタレントの不祥事ですよとワイドショーは色めき立って中継する。

他人の不幸が蜜の味とでも言いたいのか、みんなで総攻撃。そして次の事件が起こると一斉にそっちを向く。CM制作者してはたまったもんじゃない。そんな時限爆弾のような俳優や歌手は取り扱いたくない。制作者は起用した仲間としてトカゲのしっぽ切りのように見せしめ対象になるからだ。→　実際に出演者の不祥事やCM制作以外の問題で何度も出入り禁止を経験しました。

 

ハンコを押したのは仲介のキャスティングディレクターと広告主の宣伝部長。責任はこの二人にある。となかなか言えないのが川上にいる広告主と川下にいる制作会社の関係である。

 

一業種一社のアメリカ広告では、広告会社の選定は今後2年3年をその広告会社に任せることとなり、広告会社のクリエイティブディレクターが広告主の宣伝部長として牽引する。宣伝部長を自社で持つ必要はない。

よって不祥事イコール広告会社の宣伝部長が全責任を負うため、こんなことが起こらない。

仮に起こっても宣伝部長は有能な弁護士を使って黒を白にする必要がある。

 

これは本来広告塔であり、警察の一日署長的な意味を持つ（ほぼ冗談のような）だけ

 

安易に商品ごとに広告会社を選定する日本のやり方はやはり根底から仕切り直していったほうがいいだろう。官庁の10社コンペ、最大は50社コンペなどがあるが、総務省はそういうところをしっかりと見直していくべきだろう。公共工事や建築物のコンペとはわけが違うのだ。

 

結論としてはタレントの起こす不祥事・事件でCMを打ち切る行為は、広告主を裏切る行為とあるが、そんなことではビクともしない広告主はいる。たとえば世界一の有名ゴルファーが起こしたスキャンダル。ほかは撤退したがメインスポンサーは継続的にいまでもゴルファーブランドを維持している。それは偉業を達成するようなスポーツマンには多少のミスは起こりうる。失敗は失敗として反省するだけ（もちろん罰則はある）のこと。強いパートナーシップは、いい時も悪い時も繫がる長い時間を掛けた利益の共有。