｜ロケで一番大事なことは安全。

画になるロケ地２でお伝えしたようにロケでリスクは最小限にしなければならない。無事に出国し、安全に撮影し、無事にフィルムと一緒に帰ること。私たちプロデューサーに課せられた義務。

初めてNYに行くときに言われること。

「汚い服装・汚い靴でロケに行け！」

これは貧乏である象徴。もちろんロレックスなど高価な時計やゴールドネックレスもしないこと。

「財布は持つな！ズボンのポケットには10ドル札を5枚ずつ、左右にクシャクシャに突っ込んでおけ！」

クシャクシャにした10ドル紙幣を拾っている間に逃げることができる。左右にばらまくことで拾い上げるのに時間が掛かるからだ。100ドルで生命が助かるなら安いものだ。

「大通りは混んでいる方を歩け、住宅街サイドは歩くな！」

これは危険なゾーンは暗い方にあるという意味、そして暗闇にいる有色人種と目を合わせるな、と忠告された。

暗闇に引き込まれたらどこに連れていかれるかわからない。明るいところを歩けということ。まるで女子旅のような忠告ですが、それをみんな実行していました。

さらに、誓約書にサインして会社総務に渡します。国外で日本の法律を犯す行動をした場合、最悪の判断も受け入れること（社員は解雇、スタッフは永久追放）きっちりとそれを守ります。と。

10人20人とスタッフを引き連れるロケは危険がいっぱい。スタッフは完全に無防備でプロデューサーを頼っているからです。最新の大使館情報やスタッフのパスポートコピーは一冊の書類にしておく。ホテルのフロントやコンシェルジュを味方にしておく。現地コーディネーターとの連携が重要です。

いまは安全となった国ミャンマーでは、空港管理の空軍にスーツケースを切られて中身（スチルカメラ一式）を奪われました。→この時はコーディネートしたミャンマー厚生省が実は味方ではなかった。

安全だと言われたタイ・プーケットでは、銃口を背中に空軍の税関で100万円を要求されました。→この時は撮影機材書類の不備を突かれた。

ロケスタッフは金持ち、そしてその責任者は最も狙われやすいのです。ビジネス上のトラブルはしょっちゅう。チョロい日本人を騙してやろうと思っている外国スタッフは当たり前に存在します。

外務省HPで危険と呼ばれるレベルは4段階。これがその世界地図。黄色のレベル１は注意ですが、レベル２以上は行かない方がいい。レベル３はたぶん普通にはビザが下りないでしょう。観光と違い、ロケは危険がつきもの。さらに危険を増やすことはできません。

世界平和指数の危険度スコア（安全性・軍事化・内外での紛争程度の３つを審査）

★安全ではないと認識される危険度レベル上位20か国

引用：2019年外務省及びイギリス・エコノミスト紙データ

宗教や民族紛争が活発な地域や政治腐敗の進んだ国もまだたくさんあります。どうしても行かなくてはならないという結論以外はロケは避けましょう。（それでも世界遺産の撮影とか、国境なき医師団の撮影とかはあるんですよね）

出入国管理をやっている軍人がすでに怪しい。アルバイト感覚で金品を取り上げることをなんとも思っていない（金品を持ってくることが悪い！）人たちがたくさんいる。政治腐敗度が高いと国民までも腐敗していくのです。

安全は見えません。安全を自分たちで工夫して確保する。それができない人は行くべきではありません。そのフィルムには広告主の信用が託されているのですから。

そしてもうひとつ大事なのは健康管理。生水は飲まない。火の通ってない食べ物（フルーツ以外）は口にしない。にぎやかなマーケットとかに行き、つい日本の屋台のように食べたくなるもの。それは禁止。川の水を汲み、洗わないバケツの中でゴシゴシしただけのものの可能性大。帰国時におなかを壊していたら最悪成田の病院に隔離、原因がわかるまで帰れないこともある。

食べ物が安く屋台が繁盛している国、危険な蚊が飛んでいる国、性病が蔓延している国、麻薬が合法の国、言い出せばどこにも行けなくなりますが、危険はいつも隣り合わせと考える。ホテルのメイドの枕チップをケチっただけで物がなくなる国はたくさんあります。外国にいる意識を忘れない。ひとりでは行動しないことを心がけましょう。