｜ 2つのパナマハット

ガラパゴスで有名なエクアドル・マナビ県の太平洋海岸線近くの小さな町モンテクリスティ（人口43,000人）を発祥とする、トキヤ（Toquilla/やしの種類）の若い葉を割いて手で編み込んだのがパナマハット。

1913年パナマ運河視察の際、作業員たちが被るこの帽子をアメリカのセオドア・ルーズベルト大統領が国内に持ち込んだことから、アメリカでメジャーなサマーハットとなり、パナマハットと呼ばれ通常ストローハットとは区別されています。

１平方インチの中の編み込んだ縦横の段数の掛け算（Weaves・Per・Inch）によりグレード32までが表現されるクエンカ産に対して、あいまいな規格（フィノ）FINOを用いるモンテクリスティ産。多くは量産可能なクエンカを指標したマーケティングで世界中のハットブランドがクエンカに発注。漂白された白くて編み込み数の多いグレード10-11あたりを中心に数万円のハットが被られています。

サブフィノ（平均WPI/120）・フィノ（WPI/200）・スーパーフィノ（WPI/330）・フィノフィノ（WPI/520）・エクストラフィノ（WPI/600以上）・ウルトラフィノ（WPI/1000以上）ミュージアムクオリティ（WPI/不明）とモンテクリスティはグレードを数値では表現しません。しかも販売に際して規格自体が目安にしかなっていないためウルトラフィノ名の商品もあり、その名称での信頼性はあまりないようです。

モンテクリスティでは昔ながらの製法を受け継ぐベテラン職人に生産を委ねられているため、数か月から1年・18か月と超高品質の注文生産が大手ハットメーカーから発注されます。

燻す際に使われる硫黄分により、ほのかに硫黄の匂いがする事が特徴のモンテクリスティ。

Llano（リャノ）：2本ずつ編み込んだ網代編み。V字の目が特徴で細かく編むことができる。

Brisa（ブリサ）：縦横1本ずつ編む石目編み。十字の目が特徴で隙間から空気が入れ替わる。

Croche（クロシェ）：かぎ針編み。デザインに図案などを用いてクラウンに隙間をつくるおしゃれ編み。

◆座って編むのではなく、こうして立って編むのがスタンダード。

※編み方の参考サイトはこちら

世界遺産の街並みを持つアスアイ県のクエンカ。標高約2,600Mに位置し、マラリア特効薬のキニーネとパナマハット生産が盛んな41万人都市。大手ハットブランドが並ぶクエンカでは、天然色主体のモンテクリスティに対して漂白されたパナマが主流。

クエンカが量産ハットだからと言って品質が悪いのではなく、不揃いの繊維で機械編みのできないトキヤ草は多くの職人がいるクエンカが産業化しているということ。アンデス山脈の盆地で比較的温暖で梅雨もないクエンカ。税金や物価が安いこと、産業があることで南米では珍しく治安がいいことからアメリカからの移住地としての認知も高い。

※世界遺産のユネスコサイトはこちら

何故人気ハットになったか？　

それは偶然にもSTETSONの最初のハット＜BOSS OF THE PLANES＞と同じ発想、日除けと水を汲むため。ルーズベルト大統領はその驚異の編み込みに感心したからに他ならない。

「必要の母が生んだ発明」は人々のハートを捉えるということです。