｜メイヨークリニックとは

臨床データだけでメイヨークリニックは理解できません。何故なら唯一無二の病院がメイヨークリニックなのです。ミシュランガイド『三ツ星レストラン』が料理界の頂点としたら、全米一の病院と位置づけられる【メイヨークリニック】は医療界の『三ツ星でありビブグルマンである』を目指しています。

メイヨークリニックのシンボルは三つの盾（臨床・教育・研究）

旅行してまで訪れたい三ツ星の仕事（この場合医療）をしながらも、患者のビブグルマン（コストパフォーマンスを実現したい）と最善策を考えている病院だから。しかもそれは創業から変わらず140年続いていることに驚いてください。

2021 ニューズウィーク病院ランキング8項目で1位、全米総合1位を誇るメイヨーのメディカルケア

重篤な病気になった際、どの病院を選ぶか？を全米で調査すると回答者の16%がメイヨークリニックを指名します（2007年全米の一般家庭への調査）。

U.S.ニュース&ワールドリポートのベストホスピタル2020 全米TOP10マップ

1000キロ2000キロ（アメリカではマイルですね）離れた町からメイヨーを目指す。

デスティネーション（最終目的地）医療という言葉はメイヨークリニックのためにあります。

デスティネーションはミシュランガイドの三ツ星の定義そのものです。

すみません、英語です

アメリカ全病院のシンボル・メイヨークリニックは140年近く前に生まれたアメリカ中西部カナダに面した小さなミネソタ州の人口10万人のロチェスターにあります。ロチェスター10万人のうちの3万人がメイヨー関係者。メイヨークリニックの町です。

メイヨークリニックのスタートはセントメアリーズ病院

発端は1883年、ミネソタ州ロチェスターにF5の竜巻が発生、聖フランシスコ会のシスター・マザーアルフレッドが町の西側にある土地を2,200ドルで購入し小さな病院【セントメアリーズ病院】を建設しました。

南北戦争でこのロチェスターにきたイギリス人医師のウィリアム・ウォラル・メイヨーはシスターアルフレッドに頼まれ1888年経営を引き継ぎ二人の息子「ウィル」と「チャーリー」とともに【メイヨークリニック】を立ち上げます。

メイヨー兄弟（ウィル＆チャーリー）が資産を病院に寄付したことがいまの病院経営に響いている

初代ウォラル・メイヨー（のちにロチェスター市長）が掲げたのは、

患者の利益を最優先すること。

病院スタッフが互いに協力・尊敬しあうこと。

臨床医療だけでなく臨床研究をすること。

さらに聖フランシスコ会のシスターたちの倫理「きれい好きは敬神に次ぐ美徳」があります。

Destination Medical Centerの日本語訳

病人は病気になるだけで非日常（普通の生活が送れない）になります。不安や金銭問題、現状の仕事の継続。たくさんのネガティブな状態に置かれ、その不安の出口は医者や看護師病院関係者にぶつけられます。

メディカルケア（手術などの医療行為）だけでなく、ヘルスケア（メンタルを含めた非日常の入院生活）を一手に引き受ける場所。

それがメイヨークリニックなのです。まだ感染症予防が言われる前（1930年代）、すでにメイヨー兄弟は手術室の無菌化を実現しています。それは手術に成功しても感染症で亡くなる人のほうが多かった時代、彼らの手術の成功率がずば抜けて高かったのを誰も信じず、のちにこの無菌化が常識化されていきました。

はるばる遠くからやってくる患者の待ち時間を最小限にするため、すべての検査から担当医には1時間以内に情報伝達されます。そして病気は患者のわかる言葉で納得いくまで説明します。

不満が溜まりやすい入院患者のイライラを少なくするための努力はすべてやる。ベッド脇の心臓モニターのアラーム音を低くしたり、ナースセンターのシフト交代時の話し声（雑音）をドアを閉めて行ったり、コロコロ転がす様々な機器運搬のタイヤを静音化したり、患者の利益を最優先する。

メイヨークリニック・ロチェスター本部

医師を頂点とするピラミッドが病院なら、メイヨークリニックは横並びの合議制の健康管理センター。メイヨーに勤務するすべての人が患者の利益を最優先にすることを第一に、職種を超えて協力する協働機関なのです。

清掃の人も工事責任者もみなメイヨースタッフとしての認識を持ち、医師に協力するアシスタント（すべてイエスではない）ではなく、医師・看護師とともに一人ひとりの患者のために何をするべきかを考え、その時の最善の行動しています。

医師は教授を頂点とするピラミッドではなく、責任者はいますがベテランも若い医師（フェロー以上）も同じ輪番制で従事します。責任者も任期制で輪番制に戻ります。メイヨークリニックよりも倍以上稼ぐことができる優秀な医師でもメイヨークリニックにとどまり、日々患者と向き合う。看護師の離職率は2,5%と全国の平均の半分です。そこにはメイヨー・プライドがあります。

医師のGOALが教授になることではなく、生涯メイヨーの医師であることがプライド

ナースの間では医療界のディズニーランドと呼び、患者（ゲスト）を迎える職員（パフォーマー）は協力し合いながら、日々患者に貢献することだけに時間を割きます。

ミネソタ州の一大事業、デスティネーション・メディカル・センター

一般的に標準医療は臨床データをもとに最先端の技術でメディカルケア（医療行為）することです。その際、インフォームドコンセント（リスク説明・同意書）が必須となります。

メイヨーにはインフォームドコンセントはなく、医師と患者の話し合いでメディカルケアを進めます。

それにはものすごく時間が掛かります。でもそれが患者には一番良いことだとメイヨーは考えます。

メイヨーで掛かる費用はとんでもなく高いのだろう？と考えるのは普通です。一般の平均より高い場合もあるし安い場合もある。それは目的が違うのです。不自由な入院日数を減らすために高額な最先端医療で短縮したり、再入院率を減らすために検査数が多かったり。最終的にその患者が望む一番良い方法を選んでいるのです。

メイヨーの新しいブランド、メイヨークリニック・アリゾナ

メイヨーの数値はウェブ公開されています。患者にも勤務するスタッフにも透明性が高いこと。早くからYOUTUBEにもチャンネルを持ち（フォロワー57万人）、FACEBOOKには45万人、SNSの発信力は優秀なスタッフを集めたり教育したりすることにも活用されます。メイヨーを知ってもらうことが大切だからです。

メイヨーの新しいブランド、メイヨークリニック・フロリダ

QOL/クオリティ・オブ・ライフ（生きている人の生活レベルをいかにキープするか）はどこの病院でも大切なキーワードですが、重篤患者の受け入れるQOD/クオリティ・オブ・デス（終末期ケア）は早くからメイヨーでは重要な仕事でした。

高額で命がけの手術をするだけが医療ではないのです。患者が亡くなり、家族は大いに悲しみます。それも一緒に引き受けるのがメイヨークリニックです。

患者（ゲスト）のためになんでもやる。それはエントランスホールにピアノがあり誰でも弾けたり、絵画や彫刻で緊張を和らげたり、滑って転ばないように廊下にワックスを上手に効かせたり、様々な取り組みで常時更新され受け継がれて140年です。

美術館のようなメイヨークリニックのロビー

お金になるかならないかは問題外。非営利組織としてメディカルケア（臨床医療）とヘルスケア（健康管理）を最高のスタッフがむかい入れています。メイヨーにきた患者の91％はメイヨーの素晴らしさを友人知人に伝えています、その数平均40人。メイヨーにきた患者の友人知人が患者として訪れる人数は平均5人。これがメイヨーのマーケティング、患者の口がすべてです。その感謝の声は無数にあり、映画の題材にはもってこいの涙腺崩壊のストーリーばかりです。

最先端であり最もアナログ。【140年続く医療界のイノベーター】それがメイヨークリニックです。

ホスピタリティという単語はメイヨーのためにある言葉です。22世紀にもメイヨークリニックは存在するでしょう。

引用：全米ナンバーワンクリニックが教える最強のマネジメント

メイヨークリニックの日本人卒業生（敬称略）WIKIPEDIAより

• 小林茂昭 – 信州大学名誉教授（脳神経外科）
• 福島孝徳 – デューク大学教授（同）
• 金彪 – 獨協医科大学教授（同）
• 植木敬介 – 獨協医科大学教授（同）
• 中冨浩文 – 東京大学准教授（同）
• 井上智弘 – NTT東日本関東病院部長（同）
• 田中將太 – 東京大学講師（同）
• 高見浩数 – 東京大学助教（同）
• 長谷川洋敬 – 東京大学助教（同）
• 清藤哲史 – 東京大学大学院（同）
• 長田周治 – 久留米大学講師（放射線診断）
• 今野卓哉 – 新潟大学助教（脳神経内科）
• 小保方優 – 群馬大学助教（循環器内科）

平成20年経済産業省の委託事業で「メディカル・ツーリズム」の関する調査（2009野村総研）があります。全54頁のうちP22-23がメイヨークリニックに関する調査データ。

★日本のメイヨークリニックを目指す会（埼玉医大PDF24頁）

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〇アメリカ事情の参照WEB

★全米における主要病院等に関する調査 – （ジェトロ・PDF112頁）

★北米（ハワイ含む）｜アメリカ｜海外の病院検索 – ヘルスケア（一般ブログ）

★世界の医療事情 アメリカ合衆国（ニューヨーク） ｜ 外務省　（外務省WEB）　

★アメリカ｜世界の医療事情（一般WEB１頁の一覧表）

★アメリカ・ベストホスピタル情報 ｜ メディエゾン – Mediaison（日本人向けアメリカ情報）

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おまけ：そんなメイヨークリニックでもみんな不安。

いつ終わることもなく、見えない敵と戦うような未来への恐怖、そしてエリートならではの不屈であるはずのプライド。院内スタッフは毎日その選択に大きな負荷がかかり、危険に立ち向かうプレッシャーを撥ね退ける強いモチベーションを必要としています。

MAYO EFFECTは2010年それを立ち上げ、院内スタッフをさらに向上させるキャンペーンとしています。

すべて英語、そしてエモーショナル（奮い立たせる）テキストですが、理解可能なビデオです

それはやはり【ALL FOR ONE,ONE FOR ALL.WE WANT YOU】

強い決意で行動し、「今日のあなたはMAYO EFFECTだった」そう仲間に言われて、明日も立ち上がる勇気をもらいます。

追記：クオリティ・オブ・デス（終末期医療）に関する厚生労働省の終末期相談支援員育成についてのPDFはこちら