｜最短でいつがわかると運命は変わる？という話です。

未来に起こることがわかっていれば運命（その後のアクション）は当然変わります。1985年の映画【バック・トゥ・ザ・フューチャー】で未来から戻った自分が自分の今を救おうとしたように、今が変われば当然未来も変わります。

では最短どれくらい先を知っていれば今後を変えることができるか？

1990年代、広告はまだ規制が厳しく特にギャンブルに関しては＜射幸心を煽る＞という目的は禁止されていました。ギャンブルは一攫千金を狙う射幸心そのもの。それを煽らないとは矛盾する規制ではありますが、基本は必要以上に煽らないという緩めなもの。初めての撮影は都内の湾岸にある競艇場（モーターボートレース）でした。

モーターボートはギャンブルの中のギャンブル。パチンコから始まり、競馬・競輪・オートレースとギャンブルにのめり込むギャンブラーの最後の鉄火場。火花が散るように熱くなる場所として【鉄火場】と呼ばれましたがいまは死語ですね。

でもそこで食べられていたのが【鉄火巻き】。マグロの赤と手を汚さずにさっさと食べられることからこの巻物は観客に受けました。イギリスでは競馬場の【サンドウィッチ】が有名です。サンドウィッチさんは熱いギャンブラー、食事時間も惜しんだわけです。

モーターボートが鉄火場なのはそのひとり単価です。1レースに20万人が訪れる天皇賞や有馬記念の競馬でも、実際に使うお金の平均は1万円未満。競輪やオートレースでも2万円弱。ところがボートレースは最高の5万円以上。そしてその最高峰は東京の平和島。ここではひとり単価8万円という驚異的な金額。これは平均値なので高額な人は帯付きのお札を持ってきます。

実際に紙袋の中にお札を詰め込み、帰りは紙袋を捨てて帰るお客様がいました。さすがに注意されていました。「中身が見えていますので隠してください」その人の取った行動は上に新聞を被せただけ、でもそれでいいんです。見えていることが危険だから。

案内の人に聞いたら「たぶん3,000万円位でしょう…」と笑っていました。1万人入場なら8億円という現金がここで使われます。そして365日レースは全国どこかのレース場で行われています。年中無休で勝負できる。鉄火場として意味する最高のギャンブル、それがモーターボートレース。いまやオリンピックスポンサーでもあり五輪マーク入りですが、当時は世間から厳しい目（怪しい人たちの巣窟のように）で見られていました。

初めての全国放送のCM。使うタレントも気を使います。観客のメインはオジサン。そしてちょっと普通じゃない人が多い。賭け事一直線な人たちですから。

ボートレースの仕組みを詳しく書くわけにはいかないので、簡単に説明すると売れ線は6艇参加のボートを連勝単式1位2位3位を当てるゲーム。1位が当たっても2位3位を当てないとハズレ。3連単と言います。6艇の上位3位までを当てるだけで平均20倍程度、100倍も15％以上の確率で起こります。100倍って1万円が100万円です。撮影前の視察でレース開催日に訪問しました。

第一印象はものすごい熱気。鉄火場と呼ばれる理由がわかります。どよめきが半端ない。ほぼオジサンで埋め尽くされたスタンドに「ウォー！」という悲鳴が聞こえた途端、舟券の白いチケットがスタンドに舞い、まだレース中だというのに皆さんスタンドから消えていきます。

「WHAT’S？　どうしてみんな最後まで見ないのか？」担当者に質問をしてみると、このゲームたった数秒で決まる最短のギャンブルだったのです。２つの大きなブイ（第１ターンマーク、第２ターンマークと言います）を3周1800Mするボートは、首位を走る人の波（曳き波）を受けて2位以下は首位を抜けることはまずない。直線スピードの勝負ではなく第１ターンマークをいかに1位通過（横滑り）するかで勝負が決まる。

時速80KMのボートは体感スピードは120KMと言われ、シートベルトはしておらず中に正座で座っています。ターンの時は【モンキーターン】と言ってハンドルを持ち中腰状態、高速な横Gを振り落とされないよう両足で踏ん張っている危険な乗り物です。

コース中央にある12秒表示（オレンジの針）の大時計（スタート地点）が15秒前から回り始め、6艇が一斉に助走してスタートラインをゼロ秒から1秒以内に通過したところがレーススタート。そして第１ターンマークを通過するまではたった数秒程度（150M6秒台）でしかありません。

あとのゴールまでの周回1分半程度は、1位は抜かれないようにインコースをしっかり走る事。そして2位は3位以下に抜かれないよう追走すること。これで上位3艇が確定してしまうのです。スタンドのどよめきはこのスタート数秒でしかない。

第1ターンマークを6艇が通過した途端、ゲームは終わります。

観客はスタンドを背にそれぞれの行動に移る。予想屋さんに行く人、鉄火巻きなどの腹を満たす人、競艇新聞と赤ペン片手にぞろぞろと動き出す。

舟券を買うことを投票と言いますが、投票締め切りのアナウンス後電光掲示板にオッズ発表。そして発走ファンファーレが鳴り、時計が回転しボートがスタート。第１ターンマークを回るまでトータル7分程度。

前説がだいぶ長くなりましたが、おそらくこれが未来を変えることのできる最短の時間、7分です。7分後がわかればあなたの手元のお金は平均20倍で増えるのです。未来を知っているのですから手元資金は際限なく増えていきます。

「ネット上カジノとかもっと速いよ！」「株取引なら数秒で変わるよ！」という人がいるかもしれませんが、そこに行き着くまでに知識や経験も必要でしょう。いろんな登録も必要です。これはただ資金をそこに置くだけで変わる世界。答えがわかっているクイズです。過去の時間とこれからの時間は一変するでしょう。

2025年ごろ始まる日本初のカジノでは最短時間はバカラでしょうか。カードゲームのバンカー（胴元）の勝ちか負けかを予想し、カードの結果判明まで２分程度。7分はたった２分に縮まります。ルーレットは3分くらい掛かりますね。ボールの落ちるのに時間が掛かります。

金がすべてではありませんが、一番早く生活は一変します。金を代理にいろんな注文が可能になるから。実はこの視察時に「試しに買ってみてはいかがでしょう」と言われ1レース買いました。それがビギナーズラックで当たりました。1,000円が18倍の18,000円。これが【あぶく銭】と呼ばれるバブルなお金です。

レースが終わり、打合せ後閉場間際の交換所に行きました。開いていたのは2つの窓口、隣には数人の警備員に囲まれた人が引き換えにいました。「お気を付けて…」と受け取っていたのは1,800万円。なんと1レースに100万円を掛けていた人です。大きさはティッシュの箱くらいの帯付きの札の塊。ショルダーバッグに無造作にしまっていました。

「ああ、大丈夫ですよ。また明日持ってきてくれますから…」と案内の方は笑っていました。常連さんにはそれくらいの金額は当たり前に行ったり来たりする金額だったようです。ただこの瞬間、私は凍りました。

ここにいると雰囲気に飲まれていきます。負けたことよりも次に勝つことしか興味ない。現実はいりません。とてもワクワクした時間。予想してハズレる。でもすぐ次に気持ちが移る。「これは何だろう？」誰でも簡単に非現実的世界に引き込まれていきます。「こりゃダメだ！」財布の中の金がただの紙になっていきます。ギャンブルは【非現実の時間が永遠に続いて欲しい】と感じてしまう。

カジノは窓がなく時計もありません。外部と完全に遮断され現金ではなくチップだけの世界。チップがゲームに参加させる道具です。本場ラスベガスでは腕時計も靴も上着も質入れしチップに変える人が続出します。それはいけません。遊ぶ金は使える限度を最初に決めておきましょう。非現実な時間は判断力を失わせる危険な場所であることをくれぐれも忘れずに。

そうそう、本業のCMは良くできました。クライアントに喜んでいただけたことは大変良かったと思います。でもそれ以上レースに投票はしませんでした。観るモータースポーツとして十分だったからです。

撮影時に乗せてもらいました。空気抵抗を減らすため低姿勢で、視線は水面20CMくらいを時速80KM（二人乗りでは60KM）で走ること、それは360度が鏡面となった水面に木製の船で猛スピードで暴走するイメージ。USJやTDSのアトラクションとは全く別の本当の恐怖体験でした。

未来は知らなくて良さそうです。何故ならそこは非現実な世界への扉だから。そこは危険に無防備で挑む世界。防備も金で買えると思うでしょうが、一番の恐怖は金で何でも済ませようとすること。金のある世界で一番起こることは裏切りです。

世界中を旅する金持ちの人は言います。「金持ちは楽しくない」金を使わせようと人は寄ってきますが、出さないと分かった瞬間その人は去っていく。その連続だそうです。そして金を出したら出したで嘘をつかれる。美味しいものは食べられます。行きたいところに行けます。でも心の底から楽しいとは思えない。もっと使えとまた言われるから。無いものねだり（もし金持ちだったらなあ…）している程度が安全でちょうどいいそうです。

【バック・トゥ・ザ・フューチャー】のマーティとドクも決して高望みはしていなかった。ただ少し失敗の連続を変えたかっただけですからね。