｜映画は配給（ディストリビューション）がすべて。

製作したものを興行し、その収益を分配する。仕組みはこうです。

いい脚本を書く。→いいスタッフに作らせる。

→タイミングよく公開（時期は大変重要です）し、損益分岐点（平均6週）まで興行する。

→二次使用でTV上映、CATVやネットチャンネルでオンライン上映。

→マーチャンダイジングで玩具や文具のライセンス販売。

＜一粒で何度でも美味しい！＞

このすべてのスタートラインが配給会社の手腕。ハリウッドの平均製作費60Mドル＋広告費20Mドル＝80Mドル。この資金を最初に投下する事。（Mはミリオン、１M＝110円＊100万）

メジャースタジオと呼ばれる5つのグループがいまハリウッドでは活動中です。

アバーブ・ザ・ライン（ATL）：配給会社は投下した資金を回収します。ラインは投下資金。その上にいるからアバーブ・ザ・ライン。興行では公開週は７：３、以降６：４、５：５と興行会社との配分を決めておく。興行収入10億円と言っても、公開週では7億円しか戻っていない。

トータル50億円といっても実際は半分の25億円。投下した80Mドル（88億円）にはほど遠い金額。最終的に配給は3倍の回収（すべてのジャンルからの売上げる240M）を10年かけて行います。

しかし、当たるのは10本に1本。だから過去のアーカイブズが稼いでくれなければ倒れます。大手メジャーはこうして大金を使い多くの作品で回収を続けられますが、資金力のない独立系配給会社は3本に1本、2本に1本と当てる映画を限定しながら公開しなければならない。いまはロングランも期待できないので即回収が求められる。

（※フラガールで大ヒットしたシネカノンもあとが続かず2010年倒産）

ミニマムギャランティ：最低保証。もしはずれても最低保証があれば被害は最小限。興行側はMGを払うことで上映したい映画を買い付けます。不動産で言えば手付金。MGは映画製作のあらゆるところに出てきます。（MGが出せない人とは組めない）

ビロー・ザ・ライン（BTL）：下請けすること。製作費や出演料はギャランティとして支払われるもの。興行の著作分配には入らない。どんなに映画がヒットしても報酬は最初の契約料のみ。

（※およげたいやきくんの子門真人さんは有名な悲劇）

スプリットライツ：世界は２つ。北米とそれ以外。80Mドルかかる資金も北米だけのもの。世界に配給するにはまたそこに広告費（マーケティング費）が40Mもかかります。

では北米担当、それ以外担当と資金を出し合って製作する仕組みがスプリットライツの共同配給。

マーチャンダイジング：「アメリカン・グラフティ」でアカデミー賞にノミネートされた若きジョージ・ルーカス監督は次作「スター・ウォーズ」を所属していたユニバーサル幹部に売り込んだ。

回答はNO!　「宇宙戦争にヒロインはいらない、宇宙戦争自体が流行らない」

ルーカスはFOX会長にスターウォーズ・シリーズを売り込み、監督・脚本・プロデューサーの権利各5万ドルを受け取ることになった。「監督費は削っていいから、マーチャンダイジングをくれないか？」

FOX会長はこの間抜けな提案をまんまと飲んだ。「そんなものを欲しがってどうするんだ？」

映画のヒットは何が起こるかわからない。B級映画＜スター・ウォーズ＞は成功し、そのマーチャンダイジングは大成功。ルーカスフィルムが得た資金（マーチャンダイジングのライセンス）は莫大なものとなった。

DISNEYが世界一の配給会社になったのもDISNEYLANDで売れる商品、歌われる曲、キャラクターグッズひとつ一つから回収されていくからだ。そしてほぼ永久に。＜デジタルアニメーション＞が当たる理由はこのマーケティングを踏襲し、売れなくなったDVDに代わるアイテムとして貢献するから。

quote(pandora the world of avatar :disney world)

デジタルアニメーションは、映画そのものがすでに広告と言われ、マーチャンダイジングが興行以上に大きな回収を得ています。UNIQLOのTシャツのMARVELキャラクター、消しゴムに書かれたキャラクター。これがDISNEYの貯金箱に1セントコインを落としていく。

デジタル・キャラクターは映画だけじゃない。FACEBOOKのCEOマーク・ザッカーバーグは自宅用AI＜JARVIS＞を使っていますが、その声はモーガン・フリーマン。これは将来カーナビ（俳優の声）で当たり前になるでしょう。

＜知的財産権（ライツ）＞それは腐らないし、何度でも使えるし、価値が下がらない。ライツは21世紀のオンライン・デジタル時代に大きな＜金の卵＞になります。アバーブ・ザ・ラインにいる人にとって優秀なライツを持つことが特許同様に会社の資産。そしてできればデジタル。勝手な行動や発言で反旗を翻すこともなく、24時間働いても文句ひとつ言わない有能なキャラクター。