屈辱・前編
WIKI的には屈服されて辱められること。
日本最大級のA広告会社にとって官公庁広告はあまりうれしくない顧客である。
安い・競合・単発。売上げ的には何も貢献しない。名誉であること以外に。
- ●BANK、それは銀行の銀行。国家機関(固有名詞は使いません)。
CDは嫌がる仕事、局長と局次長が担当だった。
局長は開口一番「お前は企画はいいや! 敵を探ってくれ」
考える間もなく、いきなりプロデューサー人格の全否定、屈辱以外何もない。
局長は超の上に超がつくほどの切れ味のいい企画マン。1言うと10わかる人。
カンヌのライオン像をひとつ持っている人です。
この屈辱的な言葉<企画には不要だ!>を簡単に、平然と言えるところ<スパイを頼む!>そしてNO! とは言わせない迫力がありました。
コンペは2週間後、●BANKは絶対に落とせない。日本最大級のA広告会社にとってそれは必然でした。
「企画で勝つことは当たり前、圧倒的な勝利で勝つ」
圧倒的とは100対1とかそういう単位。冗談のように聞こえるかもしれませんが本気です。
企画はともかく「敵を探ってくれ…」というのは、この圧倒的を裏付けるもの。
敵の企画の上の上。それを実現するための作戦資料をほぼ10日くらいで用意しろ!という意味だ。
私の得意とする情報分析。
それは誰が企画(CD)した時に誰が考えて(プランニング)、どんなCMをつくるか(演出やカメラ)。その結果どんな映像になるか。それは幾らでどれくらいの期間で作れるか。すべてアナログな情報からそれを頭の中で映像化・エクセル算出することでした。
ただ<スパイ>はできない(違法行為)ので、どうやってそれを突き止めるかを検証しました。敵は2社、例年一度このコンペは開かれるため、特定する事は容易でした。
B社は三局のエースCD、C社は局長チーム。ここ数年それは変わっていなかったからです。
所属会社が日本最大手の制作会社の傘下だったので、入庫はすぐにわかります。B社はうちの本社制作会社、C社は自社内企画でしょう。A.B.C三社コンペ。ここ数年A社は何度も落としています。C社のタレントパワーで負けている。A社はライオン保持者を立てて巻き返し。それが今回の私の担当でした。
<スパイ>できないのに<スパイ>する。この難題はこう考えます。
CMプランニングは一人ではできません。プランナー・プロデューサー・キャスティングディレクター・音楽プロデューサー…構成するスタッフによって傾向があります。得意とする画は完成品(オンエア)から想定できる。
これを逆算して、集まるスタッフによって分析する。
CMインデックスの月刊誌を揃え、まずはスタッフ観察。
プランニングは会議室の密室ですが、それ以前のブレスト(相談)は結構外でやっている。編集室・録音室・撮影スタジオ…現在進行形の場所で誰を集めてブレストしているか?
彼らの使うポストプロを張りました。
B社は夜型、夜8時9時にやってきます。役職柄ポストプロはどこでも入れるので、ロビーに彼らを待ち伏せました。C社は日中がメインの人たち、昼飯時を狙います。弁当は部屋では食べないから。
なるほど、B社は私の先輩。C社は子会社エースプロデューサー。プロデューサーはキーマンです。スタッフはある程度特定される。ここからCMのリサーチ会社でB社とC社のプロデューサーのCMを取り寄せ映像チェック。CDとプロデューサーは組んだCMに色がある。
その色を分析(カメラ・演出・音楽・編集など)、メインスタッフが見えてきました。
ここからはお土産。どんなタレントを使うか、どんな音楽を使うか。
既存の大物を起用することで●BANKにスケール感を見せるはず。
キャスティング会社に問い合わせます。
「▲▲と◆◆を抑えたいんだ!」
この抑えたいんだ!はキープしたいという言葉。ここで他社で競合している人は出せない仕組み。
「▲▲さんはもう抑えられてます。××さんならOKです」
これで▲▲はB社かC社が抑えていることがわかる。
それは音楽も同じ。有名楽曲は誰かが必ず抑える。
これを組み合わせるとどんな企画でどんなプレゼンの方向かがわかってくる。映像化イメージすることを逆算的に企画骨子を浮き上がらせる。
10日後会議室、
「B社の狙いは□□□です。狙うタレントは◎◎◎。C社の狙いは▽▽▽、狙う音楽は●○○、二者とも今回は×▽□的にわかりやすい記号を出してきていますね」
局長は、「わかった。それは踏みつぶす。じゃあ、これをビデオにしてくれ!」と企画を渡されました。
「えっ、私がですか?」
「ああ、お前しかいないだろ。プロデューサーだろ?」
さてさてここからは紙をビデオに起こす作業。紙にあるのは文字だけです。
イメージをカメラで撮って動画化する。そして音楽やナレーションを入れて2日後(48時間後)には完成させ、4日後にビデオプレゼン。という殺人的(寝る時間はない!)スケジュール。
こうしてアニメーションCMは無事にコンペの舞台に登場し、圧倒的に勝利、実作業に入りました。ビデオ完成後、紙にする必要もあるので画面キャプチャで前日深夜に大型コピー会社に持ち込みました。するとそこには競合のB社とC社の大型コピー(B全版)が並んでいました。
B社も赤坂、C社も赤坂をベースに活動する会社。大型コピーがまだ少ない時代、同じ場所でコピーしていることを担当者は知らなかった。なんとプレゼン前日深夜26時三社の企画が揃っていました。
目を凝らしてみるとなんとバッチリ。そこにあったのは想定された企画。
スパイしないでスパイする。見事にハマりました。
ただ、局長にとってはただの小石程度の存在、まだ企画にさえ入れてもらえない人でした。
後編に続く。
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