｜元気の素はトムヤムクン

30数年前、辛いものがからっしきだめな私はタイロケ1か月。トムヤムクンの洗礼を受けた。

日本では聞いたことはあるが食べたことはない。

強烈な匂い、強烈な辛さ、口に入れただけで火を噴く辛さに、その晩はトイレに住むように過ごした。でも起きる（目覚めがバッチリ）となんだか心地いい。仕事を終え、スタッフと夕食、性懲りもなくまたトムヤムクンを頼んだ。明日もまた頑張ろう！そう思える食べ物、それがトムヤムクン。

強烈な日差し、次の瞬間滝のように流れる雨（シャワー）、ムシムシと湿度100％近いバンコック。シンハービールを流し込み今日の事明日の事、スタッフの活気は高まるばかり。

そしてトムヤムクンで締める。これを数日やっていると気づく。体中の毒素が抜け、とても軽い。青唐辛子の強烈さもあるが、酸っぱいレモングラスやパクチーが私を呼んでいる。おそらく現地の人と同じ匂いのする身体になっていたのだと思う。

帰国後妻は「臭いからあっちに行って！」と言った。そうだろう、体臭は自分でも感じていた。驚いたことに帰国後何を食べても味がない。日本食が大好きな私が何一つ美味しくない。醤油がただしょっぱい黒い液体。一週間はそんな感じだった。当時数少ないタイ料理店を見つけスタッフと行ってみた。あのトムヤムスープじゃない。日本風味付けの唐辛子にパンチがない。パクチーが違う。

暑さでだらけた身体から汗と一緒に毒抜き。朝起きた時の頭皮がものすごく気持ちいい（毛穴に汚れが詰まっていない）。すっきりとした目覚めはどうなるのか？→それはその日を楽しく過ごせること。楽しい＝笑顔、笑顔＝人に伝染する。そうイイことずくめなんです。

いまはどこでも食べられるようになったトムヤムクン。エビのおいしさもありますが、辛さと酸っぱさはハマります。ぜひ夏こそ毒抜きに何度か（一度では抜けない）通ってみてください。

→　東京のトムヤムクン情報はこちら

ちなみに、死ぬ前に最後に食べたいもの（最後の晩餐）と言われたら、決めているものが二つあります。焼きタラバとボタンエビ。日本人に生まれてこの二つを食べられたことは大変うれしいことです。

もちろんお取り寄せとかではなく本場北海道に行き食べるもの。会話はいらない。ただ食すだけ。

官能的なおいしさにただ目を閉じて感謝するのみ。すべての悩みは消えていきます。気づくとそれは全部赤い食べ物でした。情熱の赤、生きていることを歓びにしてくれる色。