晴れ男
99.3%晴れ。
それが私の実績だったことはお話しました。漁師でもない私が晴れ男になったのはやはり仕事上での経験でした。30年以上前、日本の天気予報はかなり外れが多く、気象庁データでのロケでは採算が合わない。
当時最先端ウェザーリポート。1件10万円。問い合わせでもらう1枚のFAXのみ。気象データと詳細な情報が書かれた手書きFAX。ピンポイントに赤坂4丁目8番と言えば4丁目8番で返ってくる。午前8時から午後4時までが通常のロケ時間。その間90%晴れ70%曇り、50%雨など時間刻みで情報がありました。
東京の西は川崎、その西は横浜、その西はとどんどん時間をさかのぼるように西の天気を読みながら、次は風向き。南風西風、そして雲の形や高さなど、毎回そのデータを覚えてロケ現場にいくと天気図の様子がなんとなく見えてくる。
ある日、どうしてもロケが必要。時間にして2時間。追加撮影でグリーンバックの森さえあればボケに使えばなんとかなる。その時梅雨真っ盛り、毎日雨がしとしとと降る日が続いていました。オンエアは来週、今週中に撮影すれば何とかなる。土曜納品に間に合わせるには水曜までに撮ればいい。そんな予定でした。
10万円データは買えない。ネット検索のない時代、頼りは新聞の天気図のみ。テレビの予報では当てにならない。都内に公園はたくさんある。会社は銀座、最も近いのは日比谷公園。到着まで10分。代々木公園や新宿御苑、浜離宮もあるし、グリーンなら1時間圏内にかなりある。ただ雨が止む保証はどこにもない。
撮影なのでクライアントや広告会社の立ち合いもある。場所指定は前日。覚悟を決めて日比谷公園を指定した。通常晴れた日の視程(空の向こう側の見えている限界点)は10KMくらい。曇りならその半分くらい。雨ならまたその半分くらい。つまり2~3KMくらいまでは見えているはずだ。9時からスタッフは会社待機。移動は11時予定。場所変更もありうるが、許可は日比谷しか取らなかった。
ジャンジャンと降り続く雨はやむ気配はない。
クルマの中でしばし待機。クライアントも広告会社もまさか止むとは思わなかっただろう。風と雲の流れを見ていると少し境目が見えた。左から右に流れている雲と右から左に流れている雲。
品川方面からその境目がすこしずつはっきりと、そしてその境目は周囲よりも明るかった。
「行ける。やろう!」そういってスタッフを園内に入れスタンバイ。11時30分、日比谷公園上空にその雲が来た。
夜のニュースで、日中日比谷公園だけ雨が止んだことが珍しいと報告があった。
ロケ30分。晴れではないが薄曇りロケで無事終了。オンエアにも間に合った。
最悪だったのは、モーターショーのコンセプトカーのロケだった。9月開催のショー用のミュージックビデオ撮影。当然クルマは持ち出し厳禁。テストコースや閉鎖された環境のみ。
ほぼ手作りのクルマが出来上がってくるのは5月連休明けから。そして社内のいろんな部門で使うからビデオ撮影日はわずか3日ほどしか使えない。コースで1日、スタジオで1日。そして横浜の工場敷地内で1日の強行軍。指定日は梅雨真っ盛りの6月末。朝から雷の鳴る最悪の日だった。
クルマ走行にはだいたい20人のスタッフが早朝から駆り出される。カメラ・照明・美術・特殊スタントの人たち。ロケバスは最悪の空気だった。「延期しろよ! 撮れるわけないだろ」口々にスタッフは怒りを制作部(プロデューサーと制作進行)に向けてくる。
午前8時現場入り。画面に縦線が入るくらいの雨。スタッフは工場の食堂を待機所に使わせてもらった。午前9時、午前10時。時間が経つのがものすごく遅い。いらだちは制作部に非難の声としてぶつけられた。「飯出せよ!腹減ったよ」午前11時早飯。空は、習字の墨汁を混ぜたようにどす黒い雲が流れている。コンセプトカーは車庫にしまったまま。雨に濡れたら拭き掃除が大変。
昼飯を食ったらみんなやることがなく昼寝。少し静かになってくれたのはうれしかった。13時。昼寝に飽きた人たちがまたうるさく絡んできた。14時、「いい加減にしろよ!」と本当に非難の声が高まってきた。「帰ろうぜ!」スタッフは本気で帰りたがっている。
私と撮影助手は食堂にはおらず、工場敷地内で海側のずっと空を見ていた。非難の声を聞きたくなかったのもあるが、確信もあったから。15時、黒雲の流れが速くなってきた。15時20分、「来た!雲が風に押され、塊が崩れてきた」15時30分「あれっ、雲割れてきてますよね」そう助手と顔を見合わせてスタッフを呼び出しに行こうとしたら、後ろには全員集合していた。
カメラマンが叫ぶ「スタンバイ!時間ないぞ」劇用車のコンセプトカーをシートをかぶせたまま引っ張り出し、現場に準備。カメラマンがアングルチェック。16時撮影開始。黒雲がひび割れのように割れて、その中に太陽の光が斜めのビームのように発しながら雲を引き裂いていった。16時30分撮影終了。また黒雲が閉じて土砂降りが始まった。「撤収、撤収」急いで食堂に逃げ込んだ。
VFXでもなかなか描けない見事な空は、コンセプトカー誕生をイメージする最高のドラマチックな画を描いてくれた。のちにこの画をメインビジュアルにポスターやテレカがつくられた。
<4時のバカッ晴れ>
撮影スタッフには伝説的な言葉だ。どんな悪条件の天気でも4時には風向きが変わる。撮影助手と私はこの4時を朝からずっと待っていた。
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