Hey3hatterのエピソードゼロ<風の色>後編
| 風の色 後編
大学卒業後、私は社会人チームを作った。無敵後輩チームを叩き潰すためだ。すべてのスポーツは学生より社会人。さらにはプロ化。学生が一番のスポーツはスポーツじゃない。
卒業した後輩と作った一艘の船【クルーズ】。あのコンドルズも30才近くのおっさん達のチーム。やれない事はない。無論、勝った。5年間無敵。一敗もしなかった。
台湾が「無敵チームを作った。ぜひきて欲しい」と招待され台北に渡った。
そこで台湾フリスビー協会のウェルカムディナーに出た。60過ぎの爺さんが握手を求めてきた。台湾フリスビー協会会長だと言う。名刺にいくつもの肩書きがあり、すべて会長職らしい。
「君は幾らでキャプテンになったのかね?」
「何のことでしょう?」
「だから、君は幾ら払ってキャプテンになったのかね。と聞いているんだ」
「キャプテンは推薦ですよ。一番強いって事で」
「ふーん、そうか。台湾では職は買うもんだ。フリスビー協会は100万円だったよ。ハッハッハ」
私はウェルカムディナーのあと、部屋にチームメイトを集めた。
「台湾には悪いが、明日はゼロ点でいく。シャットアウトしよう。奴らはまともじゃない」
翌朝会場に着くと、もの凄いムキムキマンが勢ぞろい。軍隊の中から各種スポーツのエリートを集めたスーパーマンチームだと言う。胸板は私の倍、平均身長も180台後半のバレーボールチームって感じだ。
「ヤバいっすね」
「そうだな。ヤバそうだ」
彼らの練習をしばらく見ていた。正確なパス・走力・戦術。まあ屈強って言葉がぴったりハマる。会長はテントから出てきて、私を見て笑った。
「さあ、君たちに勝てる相手かな?」そう、目で言っていた。
「そうそう、台湾ルールを教えよう。上空にあるディスクを取れるのはその真下にいる選手だけだ。争ってディスクを奪ってはいけない。<上空権>というんだ」
私はキレた。
「わかった、飲もう。そしてシャットアウトしてやるよ」
会長はほほうと笑った。
「アンダーで行く。すべてひざ下、エアバウンスだ!」
普通パスはだいたい胸の位置、スローワーもキャッチする側もナチュラルに動作出来る。
ひざ下エアバウンスは下に空気を押し込むようにディスクを地面方向に斜めに押し出してやる。
さらにスローワーは屈み込むように小さくなると、地表スレスレに投げ出されたディスクが敵のくるぶし辺りを通過したあとに味方のキャッチする時には浮き上がってくる。この空気の反発という意味で<エアバウンス>と呼ぶ。
身長が高い人は上には強いが下には弱い。その弱点を狙う低空作戦。屈み込む分アクションは遅くなり、マンマークしている敵には詰め寄られるが、シャットアウトゲームにするにはひとつのミスも許されない。
相手オフェンスの時、当然敵は<上空権>を利用した高いパスを投げる。投げ出される方向を遮断して、風上を塞ぐ。風下に投げられたパスは風に流されてコートアウトするリスクがある。
一方向だけをカットする防御は半分のスペースを開けるため守備時間が増えてマークする味方は疲労する。ましてムキムキマン相手じゃ相当走らされるわけだ。攻撃は最短に、守備にほとんどの時間を使う。これをやった。無駄に走らされる事で身体はボロボロにされた。
しかし頭は切れている。ゲームは一方的だった。
支配率90%以上が相手の攻撃。しかし無得点。エンドゾーン近くまで運んだディスクは最後の最後でパスミスになり、一瞬の攻撃で得点される。そしてまた振り出し。試合開始直後からこの守備的布陣が機能した。
走り回る台湾チーム。だがパスはカットされ一瞬でゴールを決められる。攻撃しているのはいつも台湾。完全アウェイの中、すべての応援を背後に台湾チームは疲労していく。
それは私たちが以前パサディナで味わったあのコンドルズゲームに似ていた。
【21対0】ゲーム終了時にあの得意満面だった会長は姿がなかった。
メディアが複数私を囲み、何故強いのか?と聞いてきた。
「私たちは負けて学んだ。何故相手が強いのかを考えた。理由がわかれば答えはひとつ。その弱点を補うこと。体力やら走力やら個人能力ではなく、戦略を学ぶことで戦術をつくる。台湾は個人能力は高い。必要なのは相手の戦略を学ぶことだ」
帰国する機内で遠征隊隊長が新聞を渡してくれた。平石光男曰、スポーツ新聞の一面を私の声が飾っていた。それも二紙だ。
金で会長を買う。軍隊が国家チーム。不思議な国台湾。学んだのは価値観の違い。何ひとつ私たちに満足はなかった。
先輩の会社にもチームができた。野球で言えばノンプロ。会社が正式なチーム活動としてフリスビー部(いまはフライングディスクと呼ぶ)を認可した。社会人チームがチャンピオン。それが当たり前になった。
25年後ついに奇跡が起こった。
私が立ち上げた<クルーズ>のちに名前を変え<美技BIGI>となったが、オーストラリアで開催された世界選手権で優勝。ついに世界一となった。<美技>はイチローのトレーナーを帯同した。そのトレーナーの秘技は針。プレーヤーたちは関節のストッパーを外させた。ストッパーは限界で止まる必要要素。
ハエ叩きに最終的には勝てないが、同じ位置までジャンプしたい。半分脱臼させれば伸びる。
リスクは骨折。緩んだ関節は簡単に壊れる。関節骨折は致命傷になる。しかし手段はそれしかなかった。そして頂点に立った。
北米ではプロリーグが出来、テレビ中継が始まった。
<アルティメット>は東京オリンピックの次の次の開催2028にほかの球技と一緒に候補になった。10種ほどの最終選考のひとつ。舞台はアメリカ。アルティメットの生まれた国。
主催国特権の金メダル間違いないこの種目をみすみす無駄はしないだろう。その時日本人プロも生まれているだろう。
あの時落第点を取っていなかったら、私はやらなかっただろう。
【風の色】も見えなかった。夢中で<究極>を探した。究極はかなり近くまで来ているようだ。
ディスクプレーヤーの条件、それはたったひとつ。
【風と友だち】になることだ。
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